カブールの国際女性デーに参加して(ZINDABAD DEMOCRACY 12号より抜粋ー5)

3月8日、国際女性デーの集いに参加した。私にとって日本以外で国際女性デーを祝う初めての機会となった。「祝う」といっても日本ではほとんど祝っている格別な感覚はなく、イラクの女性活動家が来日した折お話を聞いて男女平等の意識を強めたことがあった。しかしそれだって招請者と、本人の勇敢な意志があっために恵まれた経験だった。女性デーはカブールの結婚式場を借りて行われた。会場は深い赤のカーペットに金色の装飾が印象的なとても豪華な雰囲気。「女性の自由・人権が認められるまで私たちは闘い続ける」というスローガンを書いた大きな旗が目についた。昨年は治安上の理由でカブールでは女性デーを開催することができなかったが、今年は集うことができ、私は幸運にもこの場に居合わせることができた。

まず何よりも驚いたのは人、人、人の山。実は会場へむかう車中でどのくらいの人が参加するのかを聞いたのだが、一〇〇〇人以上というMaral(マラル)さんの答えに私たちツアー団全員が半信半疑だった。会場に着き人の多さに驚いた。一〇〇〇人は優に超えていたのではないだろうか。皆おのおのの一番の正装で、女性たちが美しいのはもちろんだが、可愛い子どもの姿もいて、親子で参加できること自体が「女性が社会へ出て行ける」という女性デーの目標を実践している場となっていると感じた。男性の姿も多く、少なくとも三分の一くらいは男性だったと思う。とりわけ男性優位のイスラム社会で女性がこれほどいきいきとしている場はないのでは、と思う。また、ここに参加していた男性は女性の権利拡大に非常に積極的で、女性が前へ出ることについて「寛容」という段階を超えて、女性と一緒に男女平等の社会をつくりださねばならないという強い信念をもっていた。そのような意味で、女性デーを本当に「祝う」集会だった。司会の女性は20代前半と見える若さだったがしっかりと挨拶し、体から溢れる大きな声で今日の集会の成功を呼びかけた。一人ひとりが「私がこの国を変えるんだ。私たちが愛する祖国の女性の叫びを代表しているんだ」という自発的な意志を持ち、壇上に次々と上る。体全体で訴える、とても力強い声でのスピーチが続く。私がその人生をかけた全身の声からうけとったのは「勇気」だった。闘いの元にある「勇気」。このことは絶対に忘れない。始まって10分としないうちに彼女たちの声は私の魂に火をつけていた。残念ながら集会の話の内容はダリ語で全く分からなかったが、それでも視覚で理解できるものがあった。演劇だ。工夫と練習を積み重ねた演技は、例えばタリバンをはじめとする悪党どもが女性は外出しなくてよい、仕事をすることを許されていない、その様子を黒い衣装をまとって表し、対抗する白い服をきた女性が抗議を熱演で伝えるというようなものだった。どれも甲乙つけがたい演劇の中でもひときわ注目を浴びていたのは12歳前後と見える女の子のものだった。制服姿の彼女は、アフガニスタンでは女性が学校にいかなくてよい、外出していたらひどいときには硫酸をかけるという大変な目に逢う現実を演じ、「私は学校にいきたい」と涙もありで叫んでいた。劇の他には歌や詩の朗読があった。男性も何人もが詩を詠んだ。深い人間性と大きな愛を語り、闘いを誓うその姿にはこれまでにない憧れと尊敬の気持ちを抱かずにはいられなかった。少女たちは歌った。美しい伝統衣装を身にまとい高らかに「私たちの祖国よ。愛する祖国の土地よ」と。RAWAが配慮してくれたのだろうか、少しの間隣に座った女性がアフガニスタンでは珍しい英語ができる女性だった。後で分かったのだが、彼女はカブール教育大学の英文学の教師のNeema(ニーマ)先生といい、この集会の主催責任者の恩師だそうだ。そのニーマ先生から、少女たちが歌っていたのはアフガニスタンの国歌と教えてもらった。国歌は学校の教育課程に組み込まれているそうだ。そしてニーマ先生も私もこのスピーチが男性の中では一番だと一致したのが、『女性デーの起源・意義』を語っていたものだ。彼は参加者に対し啓発をするように訴えた。

この日だけで終わることなく、女性への抑圧を1日でも早く終わらせるようアフガニスタン市民一人ひとりが行動していかなくてはならないということをオバマもカルザイも顔負けの声のトーン、表情、抑揚で参加者に説いた。言い方は悪いが彼の主張はたぶん全員の胸ぐらをつかみ、頭上から足の下まで浸透し、心の奥底へと届いて、新たな決意をこの場にもたらした。この日一番の拍手喝采が止まななかった。

さて報告を忘れてはいけないのがこの日私たちRAWA連は、RAWAが結成された場所、カブールでの国際女性デーで日本からもスピーチを行うことができたことだ。もし海外からの参加団ということでコメントなど求められた場合に備え、行きの車の中で文面を書いていたら、マラルさんに見つかり、スピーチをやるか?と聞かれ、機会をいただいた。そのため準備不足であったことのお詫びと、RAWAと連帯する会として組織名を明かして発言することが治安上の理由でできなかったことを先に伝えておく。スピーチの中身は次の通り。

ご参加の皆さま、男の子たち、女の子たちへ
あなたがたの活動にとても敬意を表します。私たちは平和を求める市民グループであり、活動の大きな目的のひとつに、女性の地位の向上をすえています。アフガニスタンでの困難な状況を日本でも聞いていましたが、現地を自分たちの目でみてやはり厳しい状況は続いており、路上で日銭を稼ぐ女性がいることを目の当たりにしました。
同時に国を再建しようとするきざしも見ることができました。
邪悪な心、抑えつける心、搾取する心は必要ではない。大切なのは純粋な心、勇気と思いやりの心、一緒に励ましあう心です。机上で一人で理想を語ることでは不十分で、行動すること、ともに語りあうことが求められているのです。
本当に社会を変えるには、本日のような集会を男性たちも持つ必要があります。
私たちも日本で民主主義、平等、人権が保障された社会をつくるため活動を続けます。そして女性の権利向上のため、活動を続けます。そして女性の権利の問題はけっしてアフガニスタンだけの問題ではなく、世界的な問題であることをここに述べます。あなたがたの活動に日本から連帯の意を表します。
ありがとうございました。

力が入りすぎたのも加わって発音が悪かったことが恥ずかしいが、とにかく気持ちだけは負けないようにと、体いっぱいで伝えた。終わってから先に発言していたイタリアメンバーが笑顔でお疲れさんと声をかけてくれ、Hさんも「大きな声でよかった」と笑顔でほめてくれたので安心する。マラルさんはとても勇敢なスピーチだったと一言。Kさんもほめてくれてよかった。セキュリティーの観点からRAWAという固有名詞は出せないとはいえ、現地の闘いから感じたことを伝え、女性の抑圧に対してもっと具体的な指摘を入れる・改善にむけ具体的行動への決意表明をするなどすればよかったかもしれないが、今後の課題としたい。女性に限らずRAWA連メンバーが毎回誰かスピーチをできればRAWA連の活動の励みとなると思う。Sさんは会場で名刺を交換するなど、英語での情報入手に努力、ダリ語ができてしまえば現地の男性とも夜通し話しこんでいただろうと想像する。Nさんは相変わらず写真撮影に走りまわっていたが、これまでの苦労もふきとび感動に溢れていたと思う。

最後にこの集会の組織運営などについて報告しよう。女性デーはRAWAがたくさん係わって中心的な役割を果たしているが、表向けはOPAWC(アフガン女性の能力向上・職業訓練のための組織)が主催している。その責任者がLatifa(ラティファ)さんという女性である。とても聡明そうな芯のしっかりとした女性だ。当日は眼鏡の奥にとりわけ引き締まった表情だった。OPAWCはRAWAが運営している識字教室・職業訓練の場としての縫製教室の提供も担っている。女性デーの集いはOPAWCが主体となり、様々な団体、個人に参加を呼びかけ、資金は各自ができる金額を募り、個人個人、団体が負担している。男性政治組織のメンバーの参加も多く、集会終了後のお茶会ではおのおのの活動ニュースをひろげ、話が尽きない様子。パキスタンから参加したという英語の男性教師は、とても積極的な会だったと思う、学校でも女性デーの集会を祝う、このような人権問題について学校でも話すと言っていた。政府の要人では、社会省の副大臣なども出席しており、この会の主催責任者の一人(男性)が副大臣と話しをしていたが、特に目新しいことは言ってなかったとのこと。女性省からの出席は無(SAWAのレポートには司法省、教育省、経済省からも代表参加ありとある)。カブール教育大学のニーマ先生と知り合い、帰国後も連絡がとれた。彼女は暴力に遭いシェルターに逃げ込んだ女性を励ます活動もしている。例え1本の花でも傷ついた女性の心を温めることができると言っていた。(アフガニスタンでは電気事情が悪いためや女性がメールチェックのためネットカフェへ出かけることが難しい場合がある。余裕をもって連絡をとる必要性と、また電話が確実ということも分かる。)お忙しいラティファさんも日本から参加があってよかったなどとメールをくれ、今後連帯を深めるため交信をつづけていきたいと思う。このツアー参加を契機に、特に私はRAWA連の皆さんのふとした言葉が時々非常に重きものであると思うようになった。RAWAもOPAWCも、きっとこのように年長者から若者へ、なかまからなかまへと精神が受け継がれてきたのであり、同じアフガンを愛する運命共同体である皆様に心から感謝する。
(N)

カテゴリー: 機関誌 ZINDABAD   タグ:   この投稿のパーマリンク

コメントは受け付けていません。